考古学ブログ: Ours! 近江貝塚研究会

その事務局員が成長を目指して綴るバラエティー

考古学に活路を見出したい人のためのブログ。近江貝塚研究会は、日本で一番ゆるくてハードな考古系研究会。毎月1回の例会は参加費無料・飛び入り歓迎。近江・貝塚・縄文の枠を取り払って学び合います!

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 弥生研究者、木製品研究者必見。ことし1月末に、我が師、水野正好先生が急逝されました。今回は先生が50年前に発掘した〈大中の湖南遺跡〉にまつわる展覧会のご案内!

 水野先生は奈良大学の先生として、たくさんの人材を育ててくださいましたが、今で言う正規職員としてのキャリアは、滋賀県教育委員会がスタート。ここから日本初の発掘調査技師として活躍され始めました。

 先生、本当は京大に行きたかったんですよねー。高校時代から梅原末治先生にも可愛がられていたそうで、梅原さんからも入学をけっこう期待されてたそうです。水野先生によればですよ(微笑)。ところが、英語がとってもザンネンで断念。で、大阪学芸大学へ行って、その頃には既に師事していた藤澤一夫先生や坪井清足先生に暖かく見守られながらご成長。

 先生、〈結果として、それでよかったんやー〉、と元気に仰っておられました。京大に行っても梅原先生達に大事に育まれていたとは思いますが、型にはまらないあの〈想念の考古学〉はきっと生み出せなかっただろう、と言うことのようです。たしかにそうかもなー。キャラが相当違ってたと思う。

 ともあれ、大学卒業後は坪井先生の引きで、奈文研の嘱託になって飛鳥寺の遺物整理。嘱託契約が切れてからは元興寺極楽坊の発掘調査担当などに勤しまれて、昭和37年、28歳にして滋賀県教育委員会社会教育課技師としてご就職。〈滋賀県丸々、わしのものー!〉みたいに、忙しくも、むちゃくちゃ楽しく、ガンガン調査を進められました。そのあたりの話は、亡くなられる前年秋に、幸いにも対談で詳しくお聞きできたので、またの機会にご紹介。私たちの行き着くべき形が1つ見えてくるかも知れません。

 で、この〈大中の湖南遺跡〉は、その頃のお手掘り遺跡。水田跡、用水路跡など、弥生時代中期初頭の水田跡が見つかって、日本における初期農耕集落のあり方をかたる重要遺跡ということで史跡指定までこぎ着けます。学問×行政、そのどっちも大事にして懸命に進めた水野先生を象徴する遺跡かも知れませんねー。

 今回の展示では“大中の湖南遺跡から出土した主な遺物を、その後に各地で発見された同時代の遺物と共に概観し、当遺跡がもたらした成果と、その後50年の弥生時代の集落研究、木製品研究の進展を紹介”する趣向。また、そのセールスポイントなんかは、担当学芸員さんにインタビューしてありますから、改めてご紹介しますね。

 ということで、開催期間は平成27年7月18日(土)~9月23日(水・祝)
 詳細はコチラにGO!→ http://azuchi-museum.or.jp/

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seashells-315344_640 あぶない!もう少しで自分のところの6月例会のリマインダー、忘れるところでした。詳細は下記の通りですけど、ポイントをココに書いておきますね。

 報告1の河本純一さんは〈過去の社会を復元する上で、我々は土器胎土という情報をどのように扱うことができるのか〉といったところを問うてくださいます。

 それから報告2の林竜馬さんは、“環境決定論を超えて、新たな自然と人との関係史を読み解くためには、考古学や歴史学などの「人の歴史」を研究していく方との共同研究”を目指してくださいますよー。

 今週末ですからね、胎土分析・地域間交流・植生復元などに興味のある方は、ぜひおいでませ!お待ちしてまーす。

              記

〈第260回例会  特集:レンズの向こうにみえるもの(Ⅱ)〉

日時:6月27日(土)午後1:30~午後6:00〈研究報告60分+質疑応答60分〉×2本

場所:滋賀県埋蔵文化財センター 2階研修室

    http://shiga-bunkazai.jp/%e5%88%a9%e7%94%a8%e6%a1%88%e5%86%85/

報告:
1 縄文時代における「交流」「地域間関係」の研究史
  発表者 河本 純一さん(公益財団法人大阪文化財センター)

2 縄文時代以降の森と人の移ろい
  -滋賀県における遺跡の花粉分析データベースの整理から
  発表者 林 竜馬さん(滋賀県立琵琶湖博物館)

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 考古学の世界を広げたい人、ご注目!今回は有機質遺物研究会 The Study group of Organic Remains(通称:オーガニック研)のご紹介。

 かつて私は〈粟津湖底遺跡〉っちゅう遺跡の調査を担当。低湿地にある貝塚だから、植物遺存体も動物遺存体も両方豊富に出土。土器・石器だけではぜったいに分かるわけない世界を鮮やかに魅せて貰っちゃいました。だから自信を持って言いましょう。有機質遺物は、考古学の世界を必ず広げます!

 で、今日はそれを真正面から楽しんでしまおうと言う、元気なグループ〈有機質遺物研究会〉のご紹介。この研究会、2014413日に発足。有機質遺物を研究をしている学生さんが中心になって頑張ってる研究会。1~2ヶ月に1度の例会とワークショップでガヤガヤと楽しく、そして真面目に成長を目指しています。

 “例会等の告知が流れるメーリングリストに参加をご希望の方は下記までお知らせください。”とのお誘いまでありますよ。ここではその〈下記〉は示しませんけれど、ぜひそのホームページまでGO!素敵な明日が待ってるかも・・。→ http://sor-kyoto.jimdo.com/


 ちなみにね、もう〈終了〉しましたけれど、第9回研究会(201566日)では、奈良にある元興寺文化財研究所 保存科学センターにご出張。

 このセンター、木器・金属器・土器など多様な保存修復を手がける日本トップクラスの施設。で、そこの桃井宏和さんに案内してもらってね、施設の見学だけじゃなく、エポキシ樹脂を使って割り箸の復元ワークショップなんかも体験したそうな。

 ホームページでは、そのおもろそうな体験風景もアップされてますから是非見てみてください。他の例会、例えば第3回や第4回の研究会では土壌洗浄なんかもしっかりやってますからね、かなり本格的ですよ。ほんと。→http://sor-kyoto.jimdo.com/これまでの研究会-2015-6/


 やっぱり、やりたいことをしっかり見つめて、トコトンやりきる研究会っていいよね。きっと明るい明日が見えてくる。ということで、〈有機質遺物研究会〉、近江貝塚研究会ともども、よろしくお願いしまーす。

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cave-paintig-490205_640考古学と世の中をつなぐ・・・そのあたりの方法を考え続けたい人、必見!考古学がアートとコラボると、どんな果実が実るのか?パブリック・アーケオロジーという観点から、そんな問いかけを探り続ける素敵なイベント、アート&アーケオロジー・フォーラムのご案内です。

 以下、その首謀者、A&Aフォーラム事務局・村野正景さんからのメッセージ。

“第8回アート&アーケオロジー・フォーラムの日時が決まりましたのでお知らせいたします。
第1回を実施したのが昨年6月29日ですから、すでに約1年経ちました。そこで今回は、これまでの成果をいったん振り返り、残り1年に迫ったWAC-8に向けて皆様と意見交換をおこなう談話会(座談会)を実施したいと思います。お誘い合わせの上、ご参加いただければ幸いです。“

 

テーマ:第1回〜第7回までの成果を振り返ろう

話題:「みえるもの・みえないもの Art & Archaeology 談話会」

話題提供者:これまでの話題提供者((出席予定)松井利夫、村野正景、渡辺裕穂、矢野健一、清水志郎、伊達伸明、安芸早穂子、中村大、日下部一司)、参加者の皆様

 

日 時:2015年7月5日(日)15:00〜17:00

場 所:京都文化博物館 本館6階(畳の部屋)www.bunpaku.or.jp

連絡先:京都府京都文化博物館学芸課 村野正景

Tel 075-222-0888(代) Email m-muranobunpaku.or.jp ●を@に替えて下さい。

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 むかし、琵琶湖のほとりの入江内湖遺跡(縄文時代早期~後期初頭)を掘っていたら大きな動物の背骨が出土。イノシシかなー、なんて呆けたら〈マグロ〉の椎骨だと分かってびっくり。縄文人のネットワーク、舐めたらキケン。
 それはともかく、縄文前半期に興味ある方、必見!鳥浜貝塚出土土器と東北の出土マグロの分析からその様相を探りますよー。この1年間、コツコツ準備してきた2人の若手研究者が果敢に挑戦。がんばれー!

【第261回例会  特集:縄文前半期の様相をコツコツ探る!】
◇日時 7月25日(土)午後1:30~午後6:00
    2本立て 1本=研究報告60分+質疑応答60
◇場所 滋賀県埋蔵文化財センター 2階研修室
    http://www.shiga-bunkazai.jp/%e5%88%a9%e7%94%a8%e6%a1%88%e5%86%85/


◇報告1 北陸地方西部における早末~前初の土器編年――鳥浜貝塚80R1区を中心に
 発表者:青山 航さん〈坂井市教育委員会文化課〉 

 要 旨:縄紋時代早期末から前期初頭については出土量の少なさから編年観が定まらず、羽島下層Ⅱ式以前の土器の様相は議論の余地が残る。そうした中、鳥浜貝塚80R1区の土器群は羽島下層Ⅱ式以前の土器を層位的に検討できる可能性が髙い。そこで、本発表では①鳥浜貝塚80R1区の土器の層位別の検討を行い、②周辺地域の遺跡の土器との検討の中から日本海側北陸西部の当該時期の検討を加えて、当該時期・当該地域の土器編年を検討する。

◇報告2 縄文時代前半期の東北地方における大型魚類の捕獲と利用 
 発表者:松崎 哲也さん〈京都大学大学院〉
 
要 旨:縄文時代の東北地方太平洋沿岸域では大型のマグロ属が多量に出土することが知られている。マグロ属の捕獲には銛の使用が想定されることが多いが、いわゆる燕形銛頭が出現するのは後期になってからであり、それ以前の捕獲方法については不明な点が多い。現在分析をおこなっている前期から中期に比定される遺跡から出土したマグロ属の椎骨には、解体痕と思われる傷跡のほかに刺突を受けたような痕跡や、石器が刺さった状態で出土したものが数点見つかっている。銛頭が出現する以前の遺跡であり、大型魚類の捕獲方法を検討する上で重要な資料である。本発表では、これらの骨の分析から縄文時代前半期の大型魚類、とくにマグロ属を対象とした漁撈活動の一端を明らかにすることを目的とする。

◇補足
 懇親会(会費3000円前後)もあります。親交拡大にご活用下さい。
 災害やインフルエンザ等の流行などに伴い、急遽中止になることもあります。怪しいときはお手数ですが、必ず瀬口携帯090-1441-5104(それからこのブログ!)などでご確認を。

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 2015年6月9日、松井章さん(元奈良文化財研究所埋蔵文化財センター長)が肝臓がんで亡くなりました。先生と近江貝塚研との関係を振り返りながら、先生のご冥福を祈りたいと思います。

 新聞等によりますと、先生の業績の1つに〈粟津湖底遺跡の調査、食生活とその季節性の復元等〉が上げられています。2万箱に及ぶ膨大な資料を相手に作業し、実際にデータを蓄積・解釈したのは、調査機関である財団法人滋賀県文化財保護協会(以下協会)ですけど、しかし、協会だけで出来る作業では絶対ありませんでした。〈豪腕・松井〉先生の学識・政治力、そして指導力がなければ、完遂できたかは微妙、或いはあそこまで調査できたかも微妙だったかも知れません。

 粟津湖底遺跡は全国的に見ても稀な〈低湿地貝塚〉。普通の遺跡では有機質の資料は腐朽してしまうのですが、貝塚であるが故に、貝や骨などの〈動物質〉の資料が良好な状態で残っていました。加えて、低湿地であるが故に〈植物質〉の遺物や食料残滓も素晴らしい状態で残っていました。〈動物質〉と〈植物質〉の両方が良い状態で残る遺跡なんて極めて本当に稀。縄文時代の食生活を復元する上でこれ以上ない一級品の遺跡でした。

 加えて、貝層と木の実の層が混じらずに、交互に堆積している部分も確認。つまり、貝を捨てていた季節の層→木の実の層を捨てていた季節の層→貝を捨てていた季節の層・・というように、縄文人の季節的な生活サイクルも復元可能。こうなると世界クラスで稀すぎる遺跡となります。

 先生はその慧眼を持って、この粟津湖底遺跡の重要性をきっちり整理し、最も適切な調査への道筋をつけて下さりました。また、強力な政治力をもって、全国で活躍されるトップクラスの先生方に声を掛けて下さり、調査指導委員会を立ち上げる基盤を構築して下さりました。

 以上は、私が就職する一年前の出来事なので人づてでしか聞いていない話ですが、粟津湖底遺跡の調査成果のレベルを高めて下さったという意味で、滋賀県や協会にとっては〈恩人〉だと私は思います。

 一方で、決して穏やかな〈聖人君子〉タイプの先生ではなかったようにも思います。私が直接指導をいただいたのは、粟津湖底遺跡の調査の2年目にあたる1991年~1996年。就職間もない私は、生意気なくせに経験値が全くないので、委員会の度に、本当に湯気が出るくらい叱られました。怒りを買いすぎて、調査担当からはずされそうになったことも。

 当時は本当にお顔を見るのも辛く、先生のおられないところで何度も愚痴を言ったりしましたが、そんな私でも飲みに連れて行ってくれたり、ご存命だった佐原真さんやいろんな方を紹介して下さったり、相当面倒見が良い方でもありました。そもそも、よその組織の若手を湯気が出るほど叱りとばす人、あまりいませんよね。・・そんな面倒くさいこと、普通はしない。オッサンになってからやっと気づきました。

 それに叱られすぎて、自信を失って、その自信を何とか取り戻すために這々の体で始めたのが、この〈近江貝塚研究会〉。始めたきっかけは他にもありますが、何とか這い上がりたかったというのは極めて大きな動機でした。貝塚研を始めていなかったら、今の私は絶対あり得ません。そういった意味でも先生は〈恩人〉でした。

 水曜日の晩、お通夜に参列し、ご焼香を手向けながら、以上のことを思い返し、お詫びと御礼を申し上げました。先生、何度も愚痴を言って申し訳ありませんでした。何度も湯気出しながら叱って下さって本当にありがとうございました。教えていただいたことを大事にして、また頑張っていきたいと思います。ご冥福を祈りつつ、合掌。  (瀬口眞司)

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〈アジアの文化資源の未来をどう切り開いていくか〉っちゅうセミナーが、今月末にありますえ。焦点は女性の役割。金沢大学人間社会研究域付属・国際文化資源学研究センターの主催です。このセンター、毎回おもろいテーマでセミナーを開催。前回のセミナー〈さよならまいぶん〉は、その煽り気味なタイトルが仲間内で非難ゴーゴーでしたけど、ふたを開けたら大好評。なかなか上手な炎上商法でした(笑)。

 そんな文資研センターさんが主宰する第11回セミナーは〈女性がきりひらくアジア文化資源の未来〉。詳細は後で明記することとして、主催者さんにうかがった今回のポイントからご紹介!
 

今回のターゲットはズバリ“若い学生さん”特に今、考古学や文化遺産関係の研究室・ゼミで活躍中の女子学生さんがメインターゲットだそうです。だから今回のスピーカーには、彼女たちが将来像を描くときにモデルになりそうな〈お姉さん世代〉を招聘しているとのこと。若い学生さんにとって、二人のゲストスピーカーが〈頑張れば手の届く存在〉として見えれば幸いですとのこと。

 確かにね、憧れっちゅうのは大事ですよね。〈あのヒトのようになりたい〉と強く思える人は、目標と課題が明確になるもん。目標と課題が明確になったら後はやるだけ。
正直、私にもずっといますもん。いてなかったら成長してこれなかったとも思う。そういった意味でもこのイベント、意義深いと思います。


 で、発表後の「対話」セクションでは〈女性をキーワードとして文化資源の未来をどのように切り開くか〉を考えちゃおうという趣向。ガンガン切り開いていくためにも、“まずは現に女性が海外で活躍していることを広く知ってもらいたい”とおっしゃってます。


 ちなみにね、今回情報提供してくれた〈よっちゃん〉さんのお話によれば、金沢大学大学院の〈文化資源マネージャー養成プログラム〉の場合、学生は留学生も含めて19人。そのうち16人が女性、日本人に限れば8人中7人が女性だそうですわ。すごいな。確かに未来は女子の手にあるかもな。よしよし、その女子ならではのアプローチにも大いに期待!
・・言い忘れてましたけど、おっさんが行ったらアカンと言う話ではないですよ、たぶん。オッサンにも学ぶ権利はあるし、何かできることもあるはず。臆せずGO!

 ということでセミナーの概要は以下の通り。
 名 称:第11回 文化資源学セミナー「女性がきりひらくアジア文化資源の未来」
 日 時:2015628日(日)13:30-17:10
 場 所:石川県四高記念文化交流館 多目的利用室3
     (金沢駅東口より北鉄バス香林坊中央公園前下車すぐ)
 入 場:無料 
 問合せ先:金沢大学人間社会研究域付属 国際文化資源学研究センター
 ※詳細はコチラ→http://crs.w3.kanazawa-u.ac.jp/info/20150628.html


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縄文晩期の研究者、注目です!国立歴史民俗博物館にある膨大な〈田中忠三郎コレクション〉。その晩期資料に関する図録が刊行されちゃいました。通信販売でもゲットできますえ。

 田中忠三郎さんといいますのは・・・いつものようにウィキペデイア先生に聞いてみますと、 “1933年(昭和8年)青森県下北郡川内町(現・むつ市)生まれ。渋沢敬三に傾注し、民具の調査・収集に奔走してきた在野の学者。(中略)20代の頃から青森県で下北アイヌの調査や、縄文遺跡の発掘調査を私的に始め、縄文中期(紀元前2500年頃)・縄文晩期(紀元前1000年頃)の遺跡を中心に調査を行う。その後1965年頃より考古学から民俗・民具に調査の対象を広げ、以降40年以上にわたり集落の姥や古老から昔の話を聞き取るフィールドワークを行う。”とありますね。

 田中さん、2013
3月に79歳で亡くなられてますが、御生前、20 30代にかけて発掘した縄文遺跡の考古学資料約1万点を国立歴史民俗博物館に提供されたと。でもね、膨大すぎて、一部を除いてほぼ未公開だったそうな。

 そこで立ち上がったのが小林謙一さん、比較的まとまった資料が含まれていて、学史的にもむちゃくちゃ有名な〈亀ヶ岡遺跡〉・〈是川遺跡〉の土器の整理に何とか着手。小林さんが中央大学に出てからは、工藤雄一郎さんが引き継いで、石器の整理や写真撮影作業等(撮影は勝田徹氏)を進め、この2015年春に刊行しました。

 で、最後まで編集に尽力した工藤さんにぶっちゃけインタビュー。一番苦労したところは、“いくつかの土器で「開腹手術」が必要だったこと”だそうです。

 たとえばね、遺跡を発掘していると普通は注口は外れて出土する。ところが田中さん、完形で出土したかのようにみせるために、色調・形態が近い別の個体の注口部をきれいにくっつけちゃいました。要するに整形手術しちゃったのね。工藤さんによりますと“図録の注口土器の写真を見ると、注口部がなくって汚くなっているものは、そういった個体です。怪しげな土器は全部「開腹」しました。”とのこと。

 にゃるほど。そういう時代もありましたよね。たまに資料館でも、今から見ると〈ガンバリ過ぎちゃった〉の復元資料あるもんな。土偶ちゃんなんかでもよくある。苦労して集めた折角のコレクション、田中さんもカッコよく魅せたかったんでしょうねー。分からんところがないでもない。

 残念ながら「開腹手術」ができなかったものもあるそうで、それが“漆塗の浅鉢の復元品2点”だとのこと。完形に復元してあるけど、田中さんがガチガチに固めちゃったので「開腹手術」を断念。器形は問題ないそうですが、やっぱり違和感出まくり。工藤さん、そんな漆塗土器を格好良く見せるために小扉写真として使用。“左右を上手いこと切って使っています。ぜひ見てみてください(笑)”だそうな!

 ともあれ掲載写真、綺麗ですよ。壷形土器に始まり、注口、台付鉢形、鉢形、盤形、皿形の各種土器、漆製品、土偶、土製品、石器、石製品。写真図版はフルカラーで合計130カット以上。実測図もさすがのレベル。

 正式書名などは以下のとおりで、表紙見本はコチラ→

 http://www.rekishin.or.jp/f-guzzu.htm (下の方にまでスクロールしてね)

 『国立歴史民俗博物館資料図録11 亀ヶ岡遺跡・是川遺跡 縄文時代遺物』 

 A4版全283頁 定価¥5,400+ 送料¥460 

 通信販売のご注文は〈一般財団法人歴史民俗博物館振興会〉まで

 E-mail shop@rekishin.or.jp

 住所:  〒285-0017 千葉県佐倉市城内町117 国立歴史民俗博物館内

 電話:  043-486-8011  FAX: 043-486-8008 

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 今回は〈博物館を盛り上げていきたいヒト〉必見。大阪・弥生博の笑撃キャラクター〈カイトとリュウさん〉。遅ればせながらですが、大紹介!

 先週のある日、職場の安土博の窓際部署(本当の意味でホントに窓際)であります安土分室でお仕事していましたら、窓の外を宮野ミケ先生が歩いておられるではあーりませんか。ミケさんちゅーたら、大阪府立弥生文化博物館でご活躍中の大先生。マンガ〈弥生博のカイトとリュウさん〉の執筆で、小学生のハートをわしづかみ。凄い破壊力だぜ! まあ、まず先生の作品、見てよ。

 先生渾身の力作はコチラ→

http://www.kanku-city.or.jp/yayoi/manga_blog/index_01.html

 かわいいでしょ。おもろいでしょ。もうね、小学生だけじゃありませんよ。当日の先生は、カイトとリュウさんのマペット(手を突っ込んで操るお人形さん)をお持ちだったんですけど、うちのスタッフのママさん達が借り受けてから、ずーっと離さない。お昼時だというのに、飯も食わずにずーっと、かわいいかわいいしちゃって返さない。大人もすっかりそのトリコ。

 これ、かわいいだけじゃないんですよね。ミケ先生は考古学のお勉強もしっかりされていて専門知識も豊富。だから内容も結構、専門的。この少しだけ専門的っちゅーところが私はとっても大事だと思う。

 子供だってアホやないからな、簡単すぎるのはつまらない。他の子が知らない、少しだけ専門的なところを知ることで、なんか自分がむちゃくちゃ凄くなった気がして、楽しくなってしまう。もともと興味がある子が、こういう風に少しだけ周りより背が高くなった気になれることが、この手の仕掛けの大事なところだと私は思う。

 わたしもねー、かつて学研さんの〈科学〉と〈学習〉の付録――特に歴史マンガをボロボロになるまで読み返して、全部覚えて、結果として教科書のことも覚えていって、友だちと歴史クイズしながら家路について、さらに歴史が好きになる・・と言う日々がありました。結果として、この世界に足を踏み入れたもんな。

 マネジメントの方から言うと、藤田田(ふじたでん)さんの戦略もそうでした。藤田さんは日本マクドナルドの創業者。徹底して子供に焦点を当てた戦略で、マクドを大きく育てました。〈三つ子の魂、百まで〉。ヒトって、小さい頃に好きになったものは、ずーっと好きで、大人になったら、自分の子供にも同じようにし向けていくもの。藤田さんはそういう信念でマクドを育ててました。だから、あー言うコマーシャルだったんだよね。

 ところが今どうよ。最高経営者がHになってからアウト。その次のヤツも見てるところが斜め上。業界外だから媒体の記事からしか分からないけど、藤田さんが育て上げた人材や仕組みは根こそぎやられてしまったらしい、と数年前からささやかれているうちにこの有様。ちょっと頑張りたい博物館よ、藤田田さんとミケ先生に学ぼう!おれもちゃんと学ぼうっと。

 話が大幅にずれましたが、ミケ先生の作品、ネットだけでなく、ちゃんとした冊子にもなってます。これ、文化庁の支援事業で作ってるから立派な〈政府刊行物〉で、国会図書館にもしっかりおさまってるんだぜ。たいしたもんだ。その詳細な書籍情報はコチラ→ 

 http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026311392-00

 ミケ先生からは〈考古楽カード〉も参考資料として頂いちゃったから、また改めて紹介しますねー。今日のところは、これでおしまい。 (瀬口眞司)

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こにゃにゃちわ。今回は、ドラッガー師匠のマネジメント論はやっぱり面白いっていう話をちょろっとします。

 この春から異動して、滋賀県立安土城考古博物館内の安土分室っていう、“ショムニ”っぽいところに配属されました(遊びに来てね♪)。で、久しぶりに電車通勤。いま改めて読み継いでいる本が、ドラッカー師匠の名作シリーズ。先週からは〈非営利組織の経営〉を熟読中。

 P.F.
ドラッカー2007 『非営利組織の経営』ダイヤモンド社 244頁 1800円+税

 師匠の著作を初めて読んだのは、数年前、母校の非常勤講師として〈博物館経営論〉という講義を始めたとき。〈博物館経営論〉って、普通は博物館学の延長でやるのかも知れない。けれども私にはちょっと違和感があって、逆に経営論から博物館を見たらどーなるのだろう、と思って読み始めたのがきっかけ。

 もちろん経営学部卒やバリバリの〈経営者〉、あるいはコンサルの方々からしたら、そんな手の出し方叱られるかも・・。でもね、ドラッガー師匠のマネジメント論はやっぱり面白い。だって、つまるところ、〈愛〉の話なんだもん。師匠の定義で言うならば、経営=顧客を創出し続けること。つまり、師匠の話で通底するテーマは、〈いかに愛され続けるか?〉。これって、人類普遍のテーマだから、経営学だけに押し込めておくのは、やっぱり勿体ない。ビジネスマンや経営者だけのモンじゃないでしょ、マネジメントって。たぶん。

 民間企業だろうが、政府だろうが、病院だろうが、地方自治体だろうが、非営利団体だろうが、マネジメントなしで、〈愛〉され続けることはない。そして、〈愛〉され続けないものに、社会的な役割はない。〈博物館経営〉でも、このあたりはやっぱり基本となる根っこの部分。憚りながらドラッカー師匠から学んだことは、博物館や公益財団の経営にもなるべく活かしていきたいとマジで思う。

 で、しつこいけれど。・・師匠のマネジメント論って、研究会の運営や個人の人生にも汎用可能。しっかり、自らのミッション(天命と言ってもいいかも)を見直し続けて、自分の活路がどこにあるのかを吟味する。そして、その活路の先で懸命になれるものをしっかり磨き、思いっきりそれを振る舞っていく。その反応をみて、その先へと転じていく。うんうん、やっぱり普遍的で共通する部分が多いわ。きっと。

 もっと早く読めば良かった思う本、あるいは40代で読んでおいて良かったと思う本の1つかも。少し時間が出来たら、改めて近江貝塚研究会についてもミッションを洗い直し、私なりの考えを述べてみますね。ではではー! (瀬口眞司)

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