fire-2596225_640

 弘前大と九州大院の精鋭二人が、縄文後期を主なターゲットとして、先史社会の適応のあり方を、それぞれの手法で新たに掘り下げる試みを繰り広げます。ご自分の研究も更に伸ばしたい方、発想や観点を磨き、ヒントを見つけにカモン!お待ちしております。(瀬口眞司)


293回例会〈どう問うか/先史社会の適応とその多様性

日時:2018年3月24(土)午後1:30~午後6:00  
  〈研究報告60分+質疑応答60分〉×2本

場所:滋賀県埋蔵文化財センター 2階研修室

    http://shiga-bunkazai.jp/%e5%88%a9%e7%94%a8%e6%a1%88%e5%86%85/

JR瀬田駅発 滋賀医大(大学病院)行きバス 「文化ゾーン前」下車徒歩5分 

(帝産バス12:45発 もしくは 近江バス1305発の乗車がおススメです。)

 

報告1:小泉  翔太さん| 弘前大学人文社会科学部特任助教 |

    土器の物理的特性に関する基礎的検討

(要旨)発表者はこれまで、縄文後期の関西地方の土器群について系統と組成構造に着目して検討を進めてきた。その結果、当該期には関東地方の土器と類似性を有する類型がしばしば認められるが、その製作技術や組成構造に占める位置付けには差異が見出された。このことを、「どのような土器をどの場面でもちいるか」という土器の「消費スタイル」の差異として捉えたが、その具体的なありかたには言及できていない。

そこで、本発表では特に土器製作技術における差異の背景を考えるべく、胎土や成形技法、器壁の厚みといった「つくり」が、容器・調理器として使用する際の物理的特性にどのていど影響するかを、実験的方法を用いて検討する。分析項目は熱物性、加熱時の温度変化、保水性の三点である。

諸研究において縄文時代の自然資源利用のありかたは時期・地域によって多様であったことが指摘されており、こうした生態的な多様性に適応する道具としての土器のありかたを、製作技術の面から追及する視座を整えることが本発表の狙いである。

 

報告2:福永 将大さん| 九州大学大学院 地球社会統合科学府 |

「縄文文化の東西差」に関する一考察 ―縄文後期中葉社会を事例として―

〈要旨〉東日本と西日本では、縄文時代の遺跡・遺構・遺物に量的・質的な差異が見られ、「東高西低の縄文文化」と言われる。こうした現象の要因として、従来、資源環境の豊かさとそれに伴う人口規模の差異が指摘されてきた。また、近年の植物考古学などの研究成果により、列島東西で資源環境が異なるだけでなく、資源環境への集団のアプローチの仕方が異なっていた可能性も提示されている。

これまでの「縄文文化の東西差」に関する研究では、主に資源環境と人間集団の関係が議論されており、多大な研究成果の蓄積がなされてきている。一方で、そうした資源環境の中で、人間集団と人間集団の交流や関係性のあり方についての東西比較研究は十分に行われてきたとは言い難い。

本研究では、縄文時代後期中葉における関東・九州両地域を東西縄文社会のモデルケースとして取り上げる。具体的な分析項目としては、土器の時空間的様態の比較検討を主軸とし、各遺跡に残された諸施設(住居址、貯蔵穴、墓地など)や石器組成の検討も行う。これらの分析結果をもとに、集団関係・集団構成という観点から両地域の縄文後期中葉社会を比較・考察し、学史的研究課題である「縄文文化の東西差」発現要因の解明に向けての一助としたい。

_________________________________

・懇親会(会費 社会人3000円前後、学生2000円前後)もあります。親交拡大にご活用下さい(JR大津駅前「養老の滝」の予定)。

・災害やインフルエンザ等の流行などに伴い、急遽中止になることもあります。怪しいときはお手数ですが、必ずブログhttp://koukogaku.blog.jp/ などでご確認下さい。