考古学ブログ: Ours! 近江貝塚研究会

その事務局員が成長を目指して綴るバラエティー

2016年03月

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綺麗な本づくりで定評のある新泉社さん。中でも「遺跡を学ぶ」は、定番の人気シリーズになってます。今回ご紹介するのは、その107冊目の〈粟津湖底遺跡〉。わたくし、瀬口眞司が執筆担当いたしました。定価:1728円(税込み)、96ページ、新泉社 (2016/3/3)、ISBN-10: 4787715372 。

で、章立てはこんな感じ。

第1章 琵琶湖の湖底を掘る

1 縄文人のタイムカプセル

2 湖底の探索始まる

3 湖底を陸地化して本格的調査

第2章 掘り出されたタイムカプセル

  1 突然あらわれた第三の貝塚

  2 貝塚の堆積物をすべて回収せよ!

  3 土器・石器・骨角器

  4 多彩な装飾品

  5 漆製品と撚り紐

  6 意外な出土品と期待された課題

第3章 粟津縄文人の暮らしをさぐる

  1 解明への手さぐり

  2 粟津縄文人の食卓を復元する

  3 粟津縄文人の四季の暮らしを復元する

第4章 琵琶湖縄文人の定住戦略

  1 琵琶湖縄文人の開拓史

  2 これからの粟津湖底遺跡


 粟津湖底遺跡ってね、大津市にある縄文早期~中期を中心とする湖底遺跡のことですわ。今は水没してますけど、かつて陸地だったころの暮らしの痕跡が、湖水にパックされた状態で克明に残っておりました。

ちなみに、第1章は調査に至る過程の物語。潜水調査のご苦労なんかも書きました。第2章では、縄文中期の第3貝塚の詳細や主だった出土品のご紹介。第3章は、本書の最大のポイント。ほかの遺跡では滅多にわからない〈縄文人の食卓の内訳や季節性〉とその解明過程のご紹介。水洗選別や同定、集計、貝殻成長線分析なんかも丁寧に書きました。で、最期の第4章は、第3章までの調査作業を踏まえて見えてきた琵琶湖縄文人たちの定住戦略とその推移の解説となってます。

 本書の編集方針で大事にされていたのは、粟津湖底遺跡の紹介はもちろんなんですけど、発掘調査とその報告書刊行に向きあった若き調査員たち(・・えー、そうです。かつての私たちのことです)の汗と涙の物語りなんかも、まぜ混ぜしながら仕立てること。ですからね、あまり期待しすぎないで読むと、まずまず楽しく読めると思います。近江貝塚研が、なぜ誕生したのかもちゃんと書きましたからね。どうよ。


 少数ですが、近江貝塚研の3月例会でもちょっこし割引価格で販売できるかも。もちろん定価でよければAmazonでも購入可。そのサイトの検索窓で〈粟津湖底遺跡 瀬口〉って入力すれば、すぐヒット。よろしかったら、試してみてね。

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近江貝塚研究会の4月例会(4/29)は、メソアメリカ考古学を専攻する新進気鋭の研究者をお招きしますよ。その観点・方法・資料操作をともにガンガン学びます!・・おもろいで。皆さんの〈芸の幅〉を広げること、請け合います。是非とものお越し、お待ちしています!

 

◆第271回例会  
特集:メソアメリカ考古学ともに学ぶ/モノ-社会論への視点

日時:4月29日(金・祝)午後1:30~午後6:00  

〈研究報告60分+質疑応答60分〉×2本

場所:滋賀県埋蔵文化財センター 2階研修室

    http://shiga-bunkazai.jp/%e5%88%a9%e7%94%a8%e6%a1%88%e5%86%85/

報告:

1 八木宏明さん | 愛媛大学大学院修士課程 | 

マヤ地域の周縁における火山噴火の影響

(要旨)本発表では、マヤ地域の周縁に位置するエルサルバドル共和国のサポティタン盆地を対象地域とし、紀元後6世紀頃に起きたと考えられているイロパンゴ火山噴火の前後における黒曜石製石器を検討し、火山噴火の影響について考える。エルサルバドル共和国に位置するイロパンゴ火山の噴火は、「AD536イベント」を引き起こした一つの要因と考えられているが、この火山噴火の影響については「壊滅説」や「一時避難説」といった単純な評価しかないのが現状である。火山噴火の影響を評価するには、噴火によって人々の生活がどのように変化したのか、また変化しなかったのかを明らかにする必要がある。そこで本研究ではマヤ文明の主要利器である石器に注目し、蛍光X線分析と肉眼分析を組み合わせた石材の産地同定や、石器の組成、製作技法などを検討し、火山噴火前後で石器の生産、流通、消費がどのように変化するのかを明らかにする。

 

2 福原弘識さん | 埼玉大学ほか | 

周縁から国家像を描く:一般住居址の空間利用からの考察

(要旨)テオティワカン国家の首都は計画都市であり、建造には多大な労働力を差配する支配者層の存在が想定されている。しかし、支配者層の活動域である都市中心部の考古学資料から、国家体制へアプローチすることには限界が見え始めている。

 本発表は、一般住居址における空間利用を通して、社会ネットワークの形成とその変遷を分析し、被支配者層である都市住人が国家という枠組みの中で、どのように権力と交渉してきたのかを考察する。その上で周縁部資料からこそ見える国家像を描いてみたい。

 

◆その他事項

・懇親会(会費3000円前後)もあります。親交拡大にご活用下さい(JR大津駅前「養老の滝」の予定)。

・災害やインフルエンザ等の流行などに伴い、急遽中止になることもあります。

 怪しいときはお手数ですが、必ず 瀬口携帯 090-1441-5104(それからブログ!)などでご確認下さい。


※5月以降の予定(敬称略)

272th 5月例会:5月14日(土)【土器から何をどう読むか!】

奥村香子(敦賀市)・田畑春菜(鹿児島大学)

273th 6月例会:625日(土)【植生史・胎土分析】

林竜馬(琵琶湖博物館)・河本純一(大阪府文化財センター)

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まいど。ご無沙汰してます。アップ、サボっちゃってました。ごめんちゃい。で、今日はね、近江貝塚研3月例会のご案内ですよ。特集名は<土地・資源の利用形態とその伝播を探る!2016春>。詳細は以下の通りです。農耕や土地利用に興味のある人は、特に必聴ですよ。たくさんのお越し。お待ちしてます!

◆日時:3月26日(土)午後1:30~午後6:00  〈研究報告60分+質疑応答60分〉×2本

◆場所:滋賀県埋蔵文化財センター 2階研修室

    http://shiga-bunkazai.jp/%e5%88%a9%e7%94%a8%e6%a1%88%e5%86%85/


◆第270回例会  特集:土地・資源の利用形態とその伝播を探る! 2016

報告1 槙林啓介さん(愛媛大学)
    稲作伝播の再検討:広範囲経済と稲作専業経済の視点から

(要旨)かつて本研究会で同じ題目の「稲作伝播論の再検討」を発表したことがある。そこでは、中国大陸の稲作成立を従来の一元論ではなく、多元的な成立過程であったことを指摘した。各地域でイネを栽培するにいたるものの、農耕具にみる稲作技術はそれぞれに独自的に発展したことを論証し、これをもとに稲作伝播もまた波紋状に広がる一元的なあり方ではないことを主張した。今回は、同じ稲作伝播の問題を生業形態と絡めて検討する。稲作の起源と形成の道程は、長江下流域の新石器時代遺跡の調査研究から、広範囲経済のひとつのカテゴリとして出現し、そこから稲作専業経済へと進展することが近年、実証されつつある。しかし、この観点の研究では、稲作伝播の問題にはいまだ迫ったものはない。広範囲経済と稲作専業経済における稲作の伝播を果たして一律に論じることができるのだろうか。また生業形態における稲作伝播のパターンにはどんなものがあるのか。こうした問題について検討してみたい。


報告2 王 雅寧さん(京都大学大学院)
    微地形からみた弥生・古墳時代の集落変遷 岡山県旭川、足守川下流域を中心に

(要旨)本研究では、弥生時代後期から古墳時代前期の旭川、足守川下流域の集落遺跡の発掘調査から得た資料を地理情報システム(GIS)で分析、時期が判明している遺構の検出面の高さで昔の生活面を復原してみた。

 地形という視点から改めて弥生時代後期から古墳時前期の集落の性格を見てき、その結果、両地域の集団の性格と発展の違いや集落変遷の類似点がわかった。そして、集落変遷に影響を与える自然的、人為的など様々な要素の中、集落の立地や遺構の分布は一部の自然要素に関わっていることも確認した。さらに、集落の性格の変化から地域内の社会構造の変容の推測も可能であると考える。


・懇親会(会費3000円前後)もあります。親交拡大にご活用下さい(JR大津駅前「養老の滝」の予定)。

・災害やインフルエンザ等の流行などに伴い、急遽中止になることもあります。

 怪しいときはお手数ですが、必ず 瀬口携帯 090-1441-5104(それからブログ!)などでご確認下さい。

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